
ヨエル書 全節講解
豊川の家の教会 長老 後藤愼二
ヨエル書の全体構造を見ることはとても重要です。
ヨエル書は「ただイスラエルに向けた一つのメッセージ」ではなく、同じ神の裁きと回復の宣言が、二つの全く異なる民に並行して語られるという二重構造で成り立っています。
A. 「古い契約の下に置かれたイスラエル」
ユダヤ人(歴史・血統・旧契約)
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神の摂理による歴史的契約民
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外形契約(儀式・律法)を持っていた
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結合がなければ滅びる
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選びの残りの者は真のイスラエル(ロマ9–11)
B. 「名目的キリスト者」 (教会時代・外形的所属)
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キリスト教文化・教会・洗礼・信仰告白の枠内に見える
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結合がない
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福音ではなく宗教形式に属する
→ 「外形だけの教会に属する者(非結合のクリスチャン)」
C. 真のイスラエル(本体・結合)
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ユダヤ人の残りの者、レムナント
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異邦人の選ばれた者
➡永遠の結合によってキリストに属する民
「真のイスラエル=結合の民」
これは 「律法が文字として与えられる古い契約下のイスラエル」 と
「律法が心に刻まれた真のイスラエル(選びの残りの者)」
の違いと同じ本質構造と言えます。
◆ヨエル書の二重構造
テーマ
古い契約下のイスラエル(宗教的イスラエル)/真のイスラエル(選ばれた者)
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裁き
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古い契約下のイスラエル:破壊・荒廃・滅びに至る
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真のイスラエル:試練・照明を通して悔い改めへ導かれる
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断食・悔い改め
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古い契約下のイスラエル:外形的儀式・命令形を自己努力と誤解
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真のイスラエル:神が心を裂き、悔い改めを生み出す
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回復
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古い契約下のイスラエル:単なる物質的繁栄期待(誤読)
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真のイスラエル:神の憐れみによる内的回復と聖化
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霊の注ぎ(2:28–32)
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古い契約下のイスラエル:教会時代の祝福を自己経験主義に転用
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真のイスラエル:結合の民の誕生(教会)
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同じ裁きの現象が降るが、その目的も結果もまったく異なる。
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滅びに向かう裁き
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命へ導く試練
いなご害・軍勢・主の日の到来は 全イスラエルに降るが、
その中で神が心の中心に光を刺す者と、外側だけで終わる者を分離する。
◆ヨエル書の構造は本質的に「律法=文字/心に刻まれる律法」と同じ構造
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モーセ契約は民族全体に外側の形として与えられた
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しかし新しい契約は選びの民の心に刻まれる(エレミヤ31, エゼ36)
同様にヨエル書でも:
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外側ではイスラエル全体が裁かれている
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内側では選びの民に霊を注ぎ、新しい民を生む(ペンテコステ)
ヨエル書の「主の日」は、律法と同じく
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外側には裁き
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内側には命
をもたらす。
ヨエル書は最初から最後まで、同じ出来事が二つの民を分ける裁きとして機能する書。
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古い契約下のイスラエル → 滅びへ
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真のイスラエル → 結合の民として立ち上げられる
そしてこれは、
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律法が文字に刻まれた民(外側)
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律法が心に刻まれた民(内側)
という二重構造と同質。